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東京高等裁判所 昭和47年(行コ)53号 判決 1973年1月23日

千葉県松戸市小金原七丁目三五番地

控訴人

清瀬四郎

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号

被控訴人

国税不服審判所長

八田卯一郎

右指定代理人

宮北登

日隈永展

中沢幸司

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(申立)

一、控訴人は、「原判決を取り消す。麹町税務署長がした相続税更正処分および過少申告加算税賦課決定処分に対する控訴人の審査請求について、被控訴人が昭和四六年一〇月三〇日にした裁決を取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

二、被控訴人は、主文第一項と同旨の判決を求めた。

(主張、証拠)

当時者双方の主張、証拠の提出、認否等は、被控訴人において乙第七号証を提出し、控訴人において同号証の成立を認め別紙のとおり主張したほか、原判決の事実摘示に記載するとおりであるから、これを引用する。

理由

一、当裁判所も原審と同様に、控訴人の本訴請求は理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、原判決四枚目表(記録七丁)一行目の「乙第四号証」の後に「乙第七号証」を加え、同二行目三行目の「認められ」の後に「成立に争いのない甲第一号証の二によつては右の認定を覆すことはできないし、他に」を加えるほか、原判決の理由に記載するとおりであるから、これを引用する。

二、よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 久利馨 裁判官 栗山忍 裁判官 館忠彦)

控訴人の主張

原判決はその「理由」において、「本件異議決定書の謄本は昭和四六年五月三日に原告に送達されたことが認められ」と認定し、その根拠として乙第一号証および乙第四号証に証拠価値を認めている。然しながら、乙第一号証は、これが原判決のいうごとく「真正な公文書」であるか否かはさておき、乙第一号証により配達の事実が証明されている郵便物が被控訴人の主張するように、(1)差出人が訴外麹町税務署長であること、(2)控訴人の住所または居所に配達されていること、(3)郵便物の内容が被控訴人のいうように異議決定書の謄本であること、の三点については何ら立証されていない。すなわち、乙第一号証は一見して明らかなように、郵便物の差出人が何人であるかを表示しておらず、また、その受取人については、わずかに氏名のみを記載するにとどまり、日々、莫大な数量に達する郵便物のうちに乙第一号証で証明された通りの郵便物が存在したとしても、これをもつて、原判決の如き事実認定の根拠とすることは経験則に著しく反するというべきである。更に、乙第一号証は郵便物の内容を示しておらず、また、その郵便物の内容が被控訴人の主張の如く異議決定書の謄本であることを立証し得る証拠は無いのであるから、乙第一号証の証拠価値は皆無というべきである。

なおまた、原判決は乙第四号証をもつて事実認定の根拠としているが、乙第四号証は、そのいずれの部分をみても、認定事実を立証する証拠は見当らない。ちなみに、訴外石川清が「本件の異議申立決定書があなたの手許に送達されたのは昭和四六年五月三日であることが郵便物配達証明書によつて明らかですから、」などと口述したことが記録されているが、これは、石川が乙第一号証を見て、石川自身の見解を述べたに過ぎず、石川が本件異議決定書の謄本の差出し、引受けまたは配達に関与した証拠は無いのであるから、乙第一号証の証拠価値が皆無であること前述のとおりである以上、乙第四号証をもつて判示のとおりの事実認定の根拠となし得ないことは明白である。

右の論述のとおり、原判決が、本件異議決定書の謄本の控訴人に到達した日を昭和四六年五月三日と認定したことは、事実の認定を誤つたものであり、右謄本の控訴人に到達した日は、甲第一号証によれば、昭和四六年五月五日であり、これに疑をさしはさむ証拠は存在しないわけであるから、頭書の控訴の趣旨のとおりの判決を求める。

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